東京高等裁判所 昭和38年(ネ)552号 判決
控訴人が昭和三十六年九月五日別紙目録二記載の本件土地をその所有者天野徳七から譲受けてその所有権を取得し即日所有権移転の登記を受けたこと、及び被控訴人杉山が当時より本件土地上に同目録一記載の本件建物を所有して本件土地を占有し、被控訴会社及び被控訴人相川が本件建物を使用して本件土地を占有していることはいずれも当事者間に争いがない。
しかして、原判決挙示の証拠によると、被控訴人杉山は天野徳七より本件土地を建物所有の目的で賃借してその地上に昭和十年頃以前より保存登記の存する本件建物を所有していたところ、その登記簿は戦災により滅失し、控訴人が本件土地の所有権を取得した当時本件建物については登記が存しなかつたことが認められる。従つて被控被人杉山は本来建物保護ニ関スル法律第一条により本件土地の賃借権を第三者に対抗し得たものであるが、右登記簿の滅失後所定の期間内に回復登記を受けなかつたことは被控訴人らの自認するところであるから、前記法条による対抗力は登記簿の滅失とともに消滅したものと解するのが相当である。けだし、一旦生じた対抗力は法律の規定する消滅事由の発生しない限り消滅するものではないとしてこの見解に反対する判例学説もなくはないが、登記による対抗力がその公示力によつて基礎付けられるものである以上、登記は反対の規定のない限り対抗力の発生要件であると同時にその存続要件であるとするのが最も事宜に適したものだからである。
(田中 岡松 今村)